2007.1.29 葬儀場へ…

 一睡もすることなく午前4時になり、昨日のこの時間に一体何があったのか…

一日時間を巻き戻すことができるのであれば、絶対に寝ない!maonを守る!

そう思ったが、できるわけもなく悲しみがまた押し寄せてくる。

 

 

 朝の陽ざしはまぶしくて、こんなに天気が良くて休みなら、間違いなく子供たちを

連れて遊びに行っているであろう…家の中では線香の匂いが立ち込めている。

今、私がmaonのためにできることは、絶えることなく線香に火を灯すことだけだ。

 

 午前中は何もできず、家族間での会話もほとんどなく過ぎていった。

午後は通夜と葬儀の打ち合わせがあるため、葬儀場まで車で行くしかない…

出かける気力もなかったが、車を葬儀場まで走らせた。

 

 

 葬儀場へ向かう途中、目にしたのは看板だった。

「〇〇家式場」と書かれた白地に黒字の看板だ。やはり現実なんだ…何度も同じことを

思うのは、現実から逃れたい気持ちが強すぎるからだと思う。

看板を目にしたことや、車から見る景色は思い出がたくさんあり涙が止まらない。

 

 

 葬儀場で打ち合わせをしたが、何をどのように話したのかはよく覚えていないが、

会場ではmaonがとても好きだった、となりのトトロの「歩こう」を流すことと、

入口に写真を飾ることを決めた。元気だった頃の笑顔の写真を…

 

 

 少しでもmaonの笑顔を探したい…そう思いながら帰宅し、パソコンを立ち上げて、

約1万枚ある写真の中から、ひまわりのようだった…お日様のようだった…

そんなmaonの笑顔を、涙を流しながら朝まで探した。

 

 

悲しかったが、もう一度maonの笑顔が見たくて…

 

 

2007.1.28 エンゼルケア

 

 家の鍵を開け、寝室にしていた和室に子供用の布団を敷きmaonを寝かす。

まるで眠っているようだ…外はまだ明るかった。時間は15時ぐらいだった気がする。

一日の間にあまりにもたくさんの悲しいことがあり、何をしたらいいのもわからず、

現実なのか夢なのか…現実味がない。心が追い付いていない。

 

 

 何となく覚えているのは、明日と明後日の昼頃までmaonはここに寝ている。

明後日の夕方に葬儀場にてお通夜、そして3日後には葬儀そして火葬…

なぜ?なんで?何が悪かったのだろうと何度も自問自答をする。

 

 

 何か悪いことをしていて罰が下ったのか?そんなはずはない。それならmaonではなく、俺自身に下されるはずだ。そうであってほしい。変われるものなら変わりたい。

 

 

 当時、妻とよく話していたことを思い出す。

「嫌なことや大変なこともあるけど、家族元気でいられればそれでいいじゃない。

 それ以外はちっぽけなことだよ。子供らのためなら何でもできる!」

贅沢を望んだわけではないが、家族みんなで元気にいられることは許されなかった。

 

 

 maonの顔を何度も見るが寝ているようにしか見えない。気が付けば外は暗くなり、チャイムがなった。義両親と長男だ。「なんでこんなことになったんだ…」

それ以外の言葉は誰からもない。そしてまたチャイムがなった。

 

 

 葬儀社の方?と思ったが、エンゼルケアの専門業者の方だった。

エンゼルケアの知識がなかったので、業者の方が何をするのか詳しく説明してくれた。

遺体が傷まないようにと、布団の中にドライアイスをいれてくれた。お気に入りの洋服に着替えさせてくれた。そしてmaonを可愛くしてくれるようだ。

 

 

 3名の女性の方がエンゼルケアを施してくれたあと、maonの顔を見ると薄く化粧をしてくれていて、顔色がとてもよく見える。まるで生きているかのように…

「可愛くしてもらえてよかったな…」そう言おうと思ったが、途中で涙が止まらなくなってしまった。

 

 

その後は、maonの傍で一夜を過ごすことにした。

食べる気力もなく。眠気もなかった。只々そばにいたかった。

もしかしたら目が覚めるかも…!これは夢だったんだ!という奇跡を信じて…

2007.1.28 自宅へ…

解剖に関して警察の方からこう告げられた。

「今回は事件性はありませんので安心してください。解剖はいたしません。」

こちらの様子を見て気の毒に思ったのだろうか。警察の方には感謝でしかない。

 

 

警察の方が帰ったあと、一度外に出て頭の中を整理する。

なぜ今病院にいるんだろう。これはリアルな夢じゃないのか?

突然死なんて現実的にありえるのか?なぜmaonなんだ?

昨晩、軽い咳はしていたがそんなのは珍しいことではない…

何度現実から逃れようとしても、それは不可能だ…現実なのだから。

 

 

その後、医師にもう一度死因を尋ねてみる。

私「考えられる原因はなんですか。」

医師「気管支に何かが詰まった様子は見られませんでした。解剖してみないと…」

私「何時頃に亡くなったのか分かりますか。」」

医師「死亡推定時刻は午前4時頃だと思われます。」

 

 

午前4時…私も妻も隣に寝ていて、なぜ気づいてあげられなかったのか。

苦しんでいたのか、眠るようにだったのか、午前4時に何があったのか…!

いくら考えてもわかるはずもない。眠りについていたのだから。

 

 

親として子供を守れなかったこと。異変に気が付いてあげられなかったこと。

前日の咳をもっと気にするべきだった。念のため病院に行けばよかった。

後悔しても、どうすることもできないが、自分を責める以外何もできないのだ。

 

 

医師との話が終わり何時間が経ったのか。

病院からの紹介だと思うが葬儀社の方が来た。

葬儀のことを話していたが、何を言っていたのか覚えていない。

何となくだが、すべてをお任せします。とだけ言ったのを覚えている。

おそらく、私と話しをした後、義両親が葬儀社と話しをしてくれたのだろう。

 

 

葬儀社が帰った後、病院から帰れることになった。

「maon、やっと家に帰れるな。病院は怖かっただろ。早く帰ろう。」

そう言ってからmaonを抱きかかえ車に乗せた。妻の腕の中へ。

 

 

ハンドルを握る手は震えていた。涙で前が見えなかった。

帰宅までの40分、妻と交わした言葉は「なぜこんなことになったんだろう…」

お互いにそれ以上口を開くことはできなかった。

 

2007.1.28 解剖

 

maonの頭をしばらく撫でていた。おだやかな顔をしている。

まるで眠っているようだ。でも、よく見ると首のあたりに痣のようなものがある…

この痣のようなものが死斑だと気が付いた。その姿を見るのがとても悲しい。

 

 

医師からの説明があると妻に言われ、別室に移動することにした。

妻は私よりも1時間以上早く病院にいたので、もう説明は終わっているようだ。

家で呼吸をしていないmaonを見つけ、とてもショックだっただろう。

そのつらさは、私以上に大きかったはず。

 

 

別室に移動しようとすると、めまいがひどく、地に足がついていない感じがする。

まだ、夢の中にいるような…そんな気持ちだった。

 

 

医師からの説明は、原因は不明。死亡推定時刻は午前4時頃だという。

「原因不明!?そんなことがあるんですか!前日は元気だったんですよ!」

医師にそう告げると、「申し訳ありませんが、現状わかるのはここまでです。

解剖すれば原因がわかるかもしれませんが…」

 

 

亡くなった原因を追究するためには解剖するしかない…

私は反対だったが妻はどうしても原因が知りたいようだ。どうするのが正解なのか…

何もわからない。呆然としていると、2人の警察官がきて声をかけられた。

 

 

「この度はご愁傷様です。今回はご自宅で亡くなられたということですが、

自宅で亡くなられた場合は、解剖をすることになるんですが…」

解剖について悩んでいたが、そう言われた時、私の口から出た言葉は…

「解剖だけはやめてください!これ以上娘を傷つけないでください!

こんな幼い体に傷をつけないでください。お願いします。」と告げて号泣した。

 

 

自分の娘が切り刻まれるなんて…耐えられない。

これ以上苦しめないでくれ。これは何かの罰なのか。

どうしてmaonが死ななくてはいけなかったのか…

午前4時にいったい何があったのか…隣にいてなぜ気づくことができなかったのか…

親として私は失格だ!大切な娘を守るあげることができなかった…頭を駆け巡った

 

2007.1.28 一筋の涙

 

震える手で車を30分ほど走らせ病院に到着した。

車を奥の駐車場に止めようとした時、裏の入り口に長男と義母の姿が見えた。

泣いている…maonがいなくなったのは夢じゃないんだな…

 

 

車を止め2人に近づくと義母から「maonちゃん、中にいるから会ってきて」

そう告げられた。その後、義母は号泣していた。そして長男も。

6歳で妹がいなくなるなんて、想像もできない悲しみだったよな…

 

 

2人は昨日まで一緒に過ごし、出かけるときはいつも一緒だった。

保育園も、家族旅行も、公園巡りも…4年間の間にたくさん出かけたな。

その間に撮影した写真の枚数は1万枚を超えている。

そういえばmaonが生まれた時、一番最初に抱いたのは長男だったな…

 

 

裏口から病院の中に入ると妻と義父、そしてmaonが病院のベッドに寝ていた。

「あれ?おだやなか顔をしている…寝ているんじゃないのか?」

最初にmaonを見た時、そう思えるほど穏やかな顔をしていた。

 

 

そして、maonの閉じた瞼から一筋の涙が流れた…

呼吸が止まって数時間が経つ。ありえないことだけど、間違いなく涙が流れている。

まるで俺が来るのを待っていたかのように…

 

 

maonの涙を手で拭い、顔に触れるがとても冷たい…

その瞬間、とめどなく涙があふれ、息ができないほど苦しく悲しかった。

もう二度と会えないんだな。笑った顔も泣いた顔も、そして声を聴くことも…

 

 

2007.1.28 人生で最も悲しかった日

 

1月28日は朝6時に起床し、東京へ出かける準備をしました。

この日はコンテストにて優勝したので、式典にて表彰される日でした。

準備を終えたのが7時頃、長男は起きていたがmaonは布団に潜っていて、頭だけが見え

ていた。

 

 

maonはよく寝る子だったので、良く寝ているな…と思い、特に気に止めることもなく

私は家を出て駅へと向かった。

 

 

電車に乗り30分が経過した頃だろうか…当時の妻から電話があった。

めったに電話をしてくることがないので、何があったんだろう…忘れ物でもしたかな?

そう思い電話に出ることにした。

 

 

…何を言っているのかよく聞き取れないが、悲鳴に似たような声で妻はこう言った。

「maonが息をしていない! どうしたらいいのかわからない!」

「実家に電話してお母さんが今、家に向かっている!」そう言ったあと電話が切れた。

 

 

いったい何を言っているのか全く理解できない…その時の私の顔は相当青ざめていた

ようで、一緒にいた同僚数名からは「どうした!顔色が悪いぞ!」と言われ、電話の

内容を説明した。

 

 

「すぐに戻った方がいいよ!表彰式はどうにでもなるから!」そう言われて我に返り、

途中下車して下りの電車に乗ることにしたが…30分の帰り道が、1時間にも2時間にも

感じられた…まるで時間が止まっているような…なんともいえない感覚に襲われた。

そして手と足が震え、立つことさえもできなくなってしまった。

 

 

駅に着き、家までの距離は歩いて10分だが思うように歩けない…

だが、そんなことも言っていられない!そう思い足をつねり震えを止めた。

どうにか走ることができるようになり、もう少しで家だ!と思った時に電話がかかって

きた。妻からだった…

 

 

「maonちゃん…ダメだって…」「今は救急車で運ばれて〇〇病院にいる」

「焦らなくていいから運転気を付けて…」そう伝えられた。

これは夢じゃないのか?それにしてはリアルな夢だ…いったい何があったのか?

maonが息をしていない?そんなはずはない!昨日は元気だったじゃないか!!

 

 

心の中で何度もつぶやいたが、これは間違いなく現実なんだと実感した。

だが私の心には、早く病院に行ってmaonに会うんだ!

そうすればきっと元気な顔が見れるはずだ!と現実逃避をしていた。

今思えば、崩壊しそうな心を自主防衛していたのかもしれない…

 

 

車に乗り込んだ時、運転席の後ろで遊んでいた子供たちの姿が浮かぶ。

涙が止まらない…運転できる状態じゃない…でも、maonが病院で待っている!

そう思いキーを回してエンジンをかけた。そして、足と手が震えが状態で運転した。

 

 

当時の状況を後日、メモにして書き綴っているが、その当時の心境はこうだった。

悪い夢なら覚めてくれ!なんでこんなことに…何か悪いをことしたか?

昔はともかく、結婚してからは真面目に過ごしてきたはず!

なぜmaonなんだ………!!!

 

2007.1.27 前日のできごと

 

1月27日はmaonがいなくなる前日ですが、この日のできごとを話します。

私は単身赴任で仕事をしているので、平日は家にいないのですが、この日は久しぶりに

家に帰りました。次の日に電車で東京に行く予定があったからです。

 

 

 

前日の夜にmaonから「明日何時ごろ帰ってくるの~」と電話がありました。

当日の仕事が終わる予定が19時頃だったので、移動を考え20時頃かな~と伝えました。

この頃は電話での会話が楽しくなっていたようで、たまに電話をかけてきてました。

 

 

 

家に帰ると玄関まで走ってきたmaon。見た感じ、特に体調が悪そうな様子もなく、

ここ最近のできごとを楽しそうに話してきた。一通り話し終わると遊びに夢中になって

いた。この時はクリスマスにプレゼントした、メルちゃんハウスで遊んでいた。

とても気にってくれたようで、買ってあげてよかった。と思っていた。

 

 

 

遊び終えたころ、一緒に風呂に入ったのが21時頃でした。

単身赴任の私は一緒に過ごす機会が少なかったので、コミュニケーションを取りたかっ

たので風呂ではシャボン玉を作ったり、風呂に浮かべるアヒルで遊んだり、なんだかん

だで1時間ぐらい風呂場で遊んでいました。

 

 

 

風呂を終え、洋服を着せてもらい、布団に入ろうとした時、maonが普段やらないこと

をしていたのを思い出す。それは、普段はその辺においてあるメルちゃんを着替えさ

せ、布団に寝かしつけていたことです。この時は成長したな。お姉ちゃんになったんだ

な…としか思っていなかったけど…

 

 

 

今考えてみると、maonは明日天国に旅立つのをわかっていて、最後にお気に入りの

メルちゃんのお世話をしたのだろうか…そう思えてならない。

 

 

 

寝かしつける時、ひとつ気になったことがある。

それは、寝付く前に軽い咳をしていたこと。

いつもは考えないことだけど、その日の夜は、咳がひどくなって痰がからんだら、苦し

いだろうな…息ができなくなるのでは…早く病院に連れて行った方がいいな。

そう思っていた。

 

 

 

長男とmaonが寝つき、私も眠りに入る。明日は日曜日だけど式典があるので東京に行

く予定だったため、遅刻はできない。早く寝ないとな…そう思いながら眠りについた…

まさか、これがmaonとの最後の別れになるともしらず…